日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第51回大会
セッションID: F39
会議情報

第4会場
茨城県におけるきのこの同定相談対応-相談に持ち込まれる種ときのこ中毒の傾向
*小倉 健夫寺崎 正孝倉持 眞寿美小林 久泰
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 近年のアウトドアブームにより,野生きのこの採集(きのこ狩り)に対する関心が高まっている.目的は食用であるため,正確な同定が必要である.都道府県における食の安全に関する指導は,本来,保健衛生部門の管轄であり,野生きのこを食する文化が広く定着している県では,保健所に専門知識を有する担当者を配置しているところもある。しかし,多くの県では,栽培きのこを扱う林業試験研究機関に相談が集中しているのが現状である.ここでは,茨城県における相談対応体制を紹介し,相談や中毒発生事例の傾向を報告する.茨城県では,林業技術センター(以下センター)が林業相談業務の一環として相談に対応してきたが,相談件数が増加し,研究業務遂行に支障が生じたため,平成11年度に相談対応マニュアルを制定し,県民からの相談窓口を県内9カ所(現7カ所)の林業指導所と茨城県農林振興公社が運営するきのこ博士館(以下博士館)とした.しかし,各窓口機関で受けた相談の多くがセンターに転送されたため,窓口担当職員の対応能力向上を目的とした研修を毎年行うとともに,博士館には,平成15年度からきのこシーズン中に相談員が配置され,センターの負担は軽減した.なお,中毒発生時の保健所からの同定相談は,緊急・正確を求められるため,センターが対応している.一般向けの展示施設であり,休日も開館している博士館は機関別の相談件数が圧倒的に多く,現地指導等で不在がちであり農林業関係者以外には馴染みの薄い林業指導所はほとんど利用されていない.平成11年度からの各年度の相談件数の上位5種には,食用ではハタケシメジ,ウラベニホテイシメジ,ムラサキシメジが,有毒種ではクサウラベニタケ,カキシメジ,ニガクリタケが頻繁に登場し,県の自然環境や県民の嗜好を反映している.中毒事例は,クサウラベニタケとカキシメジによるものが多く,知人への配布によってしばしば多人数の事故に発展している.

著者関連情報
© 2007 日本菌学会
前の記事
feedback
Top