日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第52回大会
セッションID: S2-4
会議情報

えっ!こんなところにこんなにいるの?!-卵菌類の多様性-
卵菌類に起因する魚介類の疾病
*畑井 喜司雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
魚介類の真菌病は卵菌類に起因することが多く,いったん発生すると有効な治療法がないために大きな被害を与えることがある.卵菌類は現在,クロミスタ界に含められているが,魚病学の分野では卵菌類に起因する病気を従来通り真菌病として扱われている。卵菌類は鞭毛菌類に分類される下等菌類であるが,ミズカビ目の菌は淡水魚類に水カビ病を、またクサリフクロカビ目の菌は海産の生物,特に甲殻類に卵菌症を引き起こす.いずれの場合にも遊走子が感染源となる. 水カビ病は,ミズカビ目の Saprolegnia 属やAphanomyces属などのミズカビ科の菌が感染することによって起こる病気の総称である.ミズカビ病は Saprolegnia parasitica がサケ科魚類の体表などに綿毛状に繁殖する病気であり,サケ科魚類稚魚の内臓真菌症はSaprolegnia diclina が体外に菌糸を伸長させず、魚体内のみで繁殖する病気である.また,S. diclinaは魚卵の水カビ病原因菌としても知られている.S. parasitica は間接発芽を、S. diclinaは直接発芽をするのが特徴である.真菌性肉芽腫症はAphanomyces invadans(= A. piscicida)がアユの筋肉内に肉芽腫を形成されるのが特徴である.本症はキンギョやフナには発生するが,コイには発生しない.本種に起因する病気は東南アジアでも猛威を振るっており,流行性潰瘍症候群 (EUS)と呼ばれている.本症はナマズ類やスネークヘッドには発生するが,コイやテラピアには発生しない. 卵菌症は,クサリフクロカビ目の Lagenidium,Haliphthoros,Halocrusticida およびAtkinsuella属などに分類される菌が感染する病気の総称である.本症は甲殻類の幼生や成体だけではなく,アワビなどの軟体動物,魚介類の種苗生産時の初期餌料として重要なワムシやアルテミアなどにも発生している.原因菌の特徴は,宿主内でのみ発育する組織内寄生菌であること,また遊走子産生時に放出管を宿主体外に伸長させ,その先端から遊走子を水中に遊出させること,有性生殖器官を形成しないことなどである.
著者関連情報
© 2008 日本菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top