日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第52回大会
セッションID: P092
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ポスター発表
キノコ栽培施設内で分離されたキノコ病原性Trichoderma属菌2種の帰属先は?
*土屋 有紀宮崎 和広奥田 徹
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抄録

国内各地のキノコ栽培施設内において分離された空中落下菌および栽培菌床害菌に,特徴的な茶褐色のコロニーを形成するTrichoderma sp.1が4株,緑色のコロニーを形成するTrichoderma sp.2が2株,Gliocladium型アナモルフを形成するTrichoderma sp.3が5株あった.1) Trichoderma sp.1:茶褐色のコロニー,分生子は倒卵形,円筒形,楕円形から亜球形,2.5-3.5×2.0-2.5μm,L/W 1.2-1.44.長野,福岡,大分より落下菌および害菌として分離.2) Trichoderma sp.2:緑色のコロニー,分生子は亜球形から倒卵形,2.5×2.0μm,L/W 1.14-1.26.長崎,福岡で落下菌として分離.3) Trichoderma sp.3:緑色のコロニー,Gliocladium型アナモルフ,分生子は無色で大型,3.5-5.0×2.0-2.5μm,L/W 1.44-1.78.北海道,岩手,大分他より落下菌および栽培菌床害菌として分離.これら11菌株のITS領域DNA塩基配列データをもとに,TrichoKEY (http://www.isth.info/)で検索すると,Trichoderma sp. 1とTrichoderma sp. 2は,T. pleuroticolaTrichoderma sp.3は該当する種が存在しない未同定Hypocrea/Trichoderma属菌であるという結果が得られた.本結果をふまえて,ISTH登録データを用い,近隣結合法で解析を行ったところ,Trichoderma sp. 1と2はHarzianumクレードに含まれ,T. pleuroticolaとクレードを形成した(ブートストラップ値72).しかし,Trichoderma sp.1と2はコロニーの色調が異なり,両菌株の分生子サイズ,色素の生産性はT. pleuroticolaの記載と異なっていた.また,Trichoderma sp.3はHarzianumクレードに含まれ,分離株のみの独立したクレードを形成することが分かった(ブートストラップ値98).そこでTrichoderma sp.1と2はともにT. pleuroticolaであるのか否か,またTrichoderma sp.3はHarzianumクレードに含まれる新種であるのか否かを詳細に検討するため,EF領域およびRPB2領域の配列データを用いて系統解析を行うと同時にT. pleuroticolaのタイプ由来株と直接比較した.

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© 2008 日本菌学会
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