抄録
飼料用トウモロコシなどのサイレージ調製・貯蔵時に様々な糸状菌が発生し,これを給与した家畜に下痢症状等のマイコトキシン中毒症状を引き起こして,問題となっている.2007年に栃木,群馬および埼玉の各県で採集した飼料用トウモロコシ,飼料イネ,オーツヘイ等の飼料作物と、それらを原料として調製したサイレージを細断し、滅菌精製水で振とう後,希釈液を培地に塗抹して,生育した糸状菌を分離した.分離した203菌株の形態を観察し,rDNA-ITS配列を解析した結果,多くはFusarium, Penicillium, Aspergillus, Alternaria, Cladosporium, Mucor, TrichodermaおよびPhoma属であり,その他はMicrosphaeropsis, Microdochium, StagonosporaおよびSchizophyllum属等と推定された.このうちマイコトキシンを産生すると考えられるFusarium属菌について,詳細な形態に加えてβ-チューブリン遺伝子およびEF-1α遺伝子の配列を解析した結果,数菌株をF. verticillioides, F. concentricumおよびF. asiaticumと同定した.また,F. incarnatumあるいはF. polyphialidicumと類似するが,所属不明の菌株もあった.
これらFusarium属菌のマイコトキシン産生能を,コーンミール培養菌を供試してELISAキット(RIDAスクリーン, quick DONおよびquick FUM, R-Biopharm社)により検定した結果,いずれの菌種もデオキシニバレノール(DON)産生を認めなかった.また,フモニシン(FUM)はF. verticillioidesおよびF. concentricumのF. moniliforme-complexのみで産生を認め,他の菌種では認められなかった.以上から,各地のサイレージ材料草およびサイレージからはフモニシン産生菌が分離され,フモニシンを産生している可能性がある.