日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: B26
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エノキタケ由来グルタミン酸デカルボキシラーゼの性質
*吉田 敬洋寺下 隆夫白坂 憲章
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抄録
【目的】γ-アミノ酪酸(GABA)は,自然界に広く分布している非タンパク性アミノ酸の一種であり,中枢神経では主要な抑制性の神経伝達物質として作用し,血圧上昇抑制,利尿作用,ストレスの緩和,また最近では糖尿病の予防といった様々な効果が期待されている.このGABAは生体内において,グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)によるグルタミン酸の脱炭酸で生成することが明らかになっており,これまでに哺乳動物,高等植物,細菌など様々な生物由来のGADが精製され,その性質について報告がなされている.一方,我々日本人と関わりが深いきのこは,生活習慣病などの効果が期待され,健康食品としての利用が注目されている.きのこ子実体中にもグルタミン酸やGABAが構成アミノ酸として存在しており,これらGABAを含むきのこにもGAD活性が存在することが予想されるが,食用きのこを含む担子菌由来のGADの精製およびその詳細な性質についての報告はいまだない.本研究では食用きのこの中でもGABA蓄積が多いエノキタケの子実体を用い,GADの精製を試みるとともにその性質について検討を行った.
【方法と結果】実験には奈良市内のスーパーで購入したエノキタケを用いた.酵素活性はピリドキサールリン酸(PLP)存在下でグルタミン酸を基質として反応を行い,反応によるGABAの生成を薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてスポットの濃さから半定量的に評価した.破砕した子実体を透析後,遠心分離し,上清と沈殿に分けGAD活性を測定した結果,本酵素の活性は上清よりも沈殿に多く分布していることが明らかになった.沈殿を破砕液で10回洗浄して得た上清を集めることで調製した酵素液と10回洗浄後の残渣のSDS-PAGEをそれぞれおこなったところ,共に30kDa付近にGADとみられるほぼ単一のバンドが確認された.また,残渣を酵素試料として検討した本酵素の至適pHは6付近,pH5以下で安定であり,反応の基質としてL-グルタミン酸のみを利用した.
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© 2011 日本菌学会
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