日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: C3
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アベマキが優占する広葉樹林の外生菌根菌相
*菊地 淳一吉岡 広美磯部 香堀田 まりな乾 久子
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抄録
 日本の落葉広葉樹林の外生菌根菌相の調査は主に、シイ-カシ林、クヌギ-コナラ林等において行われてきており、アベマキの優占する林分についての外生菌根菌相の調査はこれまでにないと思われる。アベマキは西日本の里山の谷筋に時に優占して分布することがある。奈良市の高円山山麓のアベマキの優占する林に40 x 50 mの調査区を設定し、外生菌根菌子実体の発生調査を行ったので報告する。調査は2007年6月から11月まで週に1~2回行い、発生した子実体の位置を記録した後、乾燥し重量を量った。また調査区内で発生したアカヤマドリについて、その菌根の同定と菌根の定量も試みた。 この調査区は胸高断面積合計のうち外生菌根性樹種が約9割を占め、そのうち7割がアベマキ、1.5割がアラカシ、残りがコナラ等で占められていた。外生菌根菌は88種1155本発生し、イグチ科、ベニタケ科、テングタケ科、フウセンタケ科の種数が多く、乾重ではイグチ科が7割を占め、テングタケが1.5割、ベニタケが1割弱とイグチ科が優占していた。樹木と子実体の空間分布を点過程のr関数を用いて解析したところ、ヌメリササタケ、テングタケ等はアラカシよりもアベマキに近い所に分布しており、どちらかというとアベマキを好んでいる可能性が示唆された。大型の子実体を作るアカヤマドリの発生も見られたため、その菌根の同定と菌根の定量についても試みた。アカヤマドリが4本/m2以上発生した場所から土壌サンプルを採取し,菌根のタイプ分け、塩基配列の解析によりアカヤマドリの菌根の同定を行った。アカヤマドリ子実体が多く発生した場所に1m2の調査区を設定し、9つのサブプロットに分割し、それぞれのサブプロットの中央から10 x 10 cm、深さ20 cmの土壌を採取し、含まれるアカヤマドリの菌根を定量したところ約90 mg/L土壌となり、調査区の菌根量は約9gと推定され、調査区に発生した子実体乾重量とほぼ同じとなり、アカヤマドリの菌根量は子実体に比べて非常に少ないと考えられた。
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© 2011 日本菌学会
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