アンサンブル
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博士論文紹介
博士論文紹介「ランダムピンニング法による理想ガラス転移への挑戦」
尾澤 岬
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2016 年 18 巻 3 号 p. 168-172

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抄録

ガラス転移とは,「原子・分子やコロイドなどの構成粒子がアモルファス状(ランダム)に凍結する現象」である.窓ガラスや光ファイバー等で知られるシリカガラスに限らず,ペットボトルなどに使用されている高分子ガラスや,インクなどの塗料を乾燥させた際に生じるコロイドガラスなど,ガラスは身の回りに溢れている.また,金属ガラスは次世代の材料として大変注目されている.しかしながら一方で,ガラス転移の基礎的な理解はあまり進んでいない.とりわけ,「ガラスは液体か固体か?」という単純でかつ根源的な質問に明確に答えることができていない.なぜならば,ガラスと液体を隔てる熱力学的な相転移,いわゆる理想ガラス転移の存在の有無が明らかになっていないからである.本研究では,ランダムピンニング法と大規模な数値シミュレーションを駆使して,アモルファスな状態のまま配置エントロピーがゼロとなる理想ガラス転移を世界で初めて観測した.

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© 2016 分子シミュレーション研究会
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