2016 年 18 巻 4 号 p. 240-243
非断熱遷移を伴う分子の光化学反応では,多くの場合電子励起状態が複数存在し,それらをバランスよく記述することが反応の遷移ダイナミクスを明らかにする上で重要となる.特に近年,実験的にフェムト秒オーダーのダイナミクスが測定可能になったことで,これらの実験結果と直接比較可能なシミュレーションの手法を確立することが求められている.本稿では,そのようなアプローチとして高精度電子状態計算と非断熱ダイナミクスの手法を組み合わせたAIMS 法を紹介し,さらに得られたトラジェクトリから時間分解光電子スペクトルを計算する方法を解説する.また,実際の分子への適用例を示し,ポテンシャル面の精度の重要性などについて議論する.