マイコトキシン
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マイコトキシン試験法:一斉分析からメタボロミクスへ
Rudolf KrskaMichael SulyokFranz BerthillerRainer Schuhmacher
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2017 年 67 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

 かび毒は,かびが産生する有害物質であり,種々の農作物を汚染する.最近開始された欧州プロジェクト “MyToolBox” を含むいくつかの研究プロジェクトが,かび毒制御のため,収穫前ならびに収穫後の効率的なモニタリング法を結びつける統合的なアプローチをめざしている.後者は食品安全を消費者に提供しかび毒低減の効果を見積もるのに必須である.分析化学,特に質量分析計は非常な速さで進化している.従来は単一のかび毒が測定されていたが,より包括的な情報が得られる一斉分析が主流となりつつある.LC-MS/MSによる多成分解析はその一例であり,われわれは,かび・微生物・植物が産生する380個の代謝物の一斉分析を実現した.のみならず,LC-MSに基づいたスクリーニング法は,新規のかび毒付加化合物,いわゆる “マスクされた” かび毒の発見に威力を発揮する.

 メタボロミクスは,omics分野として近年出現したものであるが,数百・数千の代謝物を存在濃度によらず同時解析できる可能性を秘めている.やり方は,生物もしくは食品検体に,標識:非標識の前駆体の等量混合物を加え,標識特異的なパターンを検出する.検出は新開発のソフトウェア “MetExtract” で自動的に行われ信頼性が高い.予備試験において,Fusariumかび毒デオキシニバレノールの植物による新規変換物質を同定した.

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© 2017 日本マイコトキシン学会
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