日本内科学会雑誌
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I.診断の進歩
1.視床下部―下垂体疾患診断へのアプローチ 1)下垂体前葉
片上 秀喜
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2012 年 101 巻 4 号 p. 913-923

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抄録

視床下部と下垂体の疾患は高血圧や糖尿病に比較して,稀少疾患である.たとえばACTH単独欠損症は人口100万人あたり有病率は19.1人,新規の年間発症率は0.9人と少ない.これら疾患の稀少性により,日常診療では見落とされがちで,診断と治療の遅れにつながりやすい.視床下部・下垂体疾患の診療では内分泌系と神経系にまたがる臨床徴候を手がかりに,フィードバック調節を含めたホルモン分泌調節とその異常を定量的に評価する.特に,視床下部・下垂体周辺の腫瘍や炎症性病変ではmass effectにより,頭痛,視野狭窄(典型的には両耳側半盲)や視力低下を訴えることが多い.経時的かつ階層的に進行する下垂体ホルモン分泌低下症に対して,適切な診断を行う.また,われわれが開発したホルモン・ペプチドの超高感度測定法は下垂体機能低下症の病態解明に有用である.そして,視床下部・下垂体部の形態異常をMRI検査で評価する.さらに,必要時,遺伝子検査や病理検査を加えることにより,確定診断に至る.2009年10月より,間脳-下垂体の7疾患・病態が厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象疾患と指定され,公費医療助成の対象疾患に指定されている.患者から認定の依頼があった場合は,担当医師は「間脳下垂体機能障害に関する調査研究班」からの診断と治療の手引き(ガイドライン)に従い,申請し,審査を受けることになっている.現在,本ガイドラインの基礎となる各種ホルモン測定値の標準化(国際化を含む)と,疫学研究に基づく診療ガイドラインの構築と国際比較が喫緊の課題である.

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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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