2013 年 102 巻 7 号 p. 1807-1813
低Na血症を指摘される患者の大部分は65歳以上の高齢者である.低Na血症が症状・所見から見い出されることは少なく,多くの場合ルーチン検査から抽出される.見い出された低Na血症の原因疾患の鑑別診断が重要となる.水代謝やNa代謝の異常が基盤となるが,水利尿不全に伴う体液過剰による希釈性低Na血症が大部分を占める.これにはうっ血性心不全,非代償期肝硬変やネフローゼ症候群などの浮腫性疾患による低Na血症(hypervolemic hyponatremia)や,SIADH,下垂体前葉機能低下症や甲状腺機能低下症などによる低Na血症(euvolemic hyponatremia)が含まれる.一方,腎のNa保持能が減弱して低Na血症に陥る鉱質コルチコイド反応性低Na血症(MRHE)やNa摂取不足などNa代謝異常による症例もみられる.低Na血症の診断には循環血液量の評価がきわめて重要であり,これを基盤にして病態解析を進めることになる.