抄録
1990年代以降,欧米では小型の連続流ポンプ型補助人工心臓(VAD)が臨床に登場し,安定した長期補助が可能となった.デバイスの改良は急速に進み,長期成績は改善の一歩をたどっている.当初,心臓移植への橋渡しが主目的であったが,欧米ではここ1~2年でdestination therapy(DT)が適応の40%を超えるようになってきた.わが国では2005年以降4種の植込み型VADの臨床治験が行われた.2011年にEVAHEARTとDuraHeartが,2013年4月にHM-IIが保険適用となり,重症心不全の治療体系は大きく変わりつつある.Jarvik 2000は2013年秋までには承認される見込みである.しかしながらVAD治療においてすべてが植込み型の適応になるわけではなく,植込み型,体外式のそれぞれの目的や適応を良く理解して有効に使い分けることは重要である.VAD治療成績は装着前の重症度に依存しているために,心原性ショックや末梢臓器障害をきたす前に装着を考慮することが成功のカギである.またわが国においてDTをどのように導入していくのか議論が必要である.