日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
在宅医療の現状と課題
川越 正平
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2014 年 103 巻 12 号 p. 3106-3117

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抄録

在宅医療とは,end of lifeにある患者の尊厳や生活の質を重視するための一医療形態である.地域を病棟と捉え,24時間365日の安心を提供する.疾病を国際生活機能分類ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)の観点から生活機能障害と捉え,集学的ケアや介護と連動する形で医療を提供する.患者が有する病態や背景を包括的に把握することにより,その臨床経過や改善可能性,予後などを予測して,“軌道”に基づく意思決定支援を患者に継続して提供する.迫りくる高齢多死社会に対応するためには,在宅医療の普及発展が必要不可欠であることから,複数医師の共同による体制づくりや,医師と訪問看護師がチームとして機能するなど,在宅医療チームが地域の中で構築されていく必要がある.病院医療と在宅医療,そして介護が地域の中で連動して提供されるために,垂直的統合や水平的統合が図られるべきである.現状では立ち後れている診療の標準化や研究,そして,在宅医養成のための教育研修が在宅医療普及発展の鍵といえる.我が国の社会保障政策の根幹に位置づけられる「地域包括ケア」において,在宅医療は最も重要な構成要素の1つである.加えて,病院の医療従事者が在宅医療のエッセンスを知ることによって,病院医療の質向上や退院支援に役立てることも期待される.

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© 2014 一般社団法人 日本内科学会
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