日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
薬剤アレルギーの最前線
山口 正雄
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2016 年 105 巻 8 号 p. 1451-1454

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抄録

薬剤アレルギー(drug allergy)は,今まで国内にも国際的にも確立されたガイドラインがなく,眼前で起きてほしくない不運,あるいは予知・予測とはほど遠い偶発的事象と捉えられがちである.確かに,薬剤アレルギーは他の疾患と比べて扱いづらいところがあり,医原性(iatrogenic),そして正確な診断と有症率調査が難しいという特徴を持っている.薬剤アレルギーの患者数を「現時点で症状を有する数」として把握するのは不可能であり,薬剤アレルギーの既往歴を把握する必要があるが,患者の記憶および自己判断に頼らざるを得ない.そして,臨床現場で当該薬剤を投与される患者数を,短期投与から長期投与までを正確に全数把握するのも困難であり,投与患者総数に対して薬剤アレルギーを発症した患者の比率の算出が極めて難しい.薬剤アレルギーの診断基準が確立していないことも問題である.症状,機序が多様であるだけでなく,アレルギー機序で生じたのではない反応(例:X線造影剤によるアナフィラキシー)や,機序不明の反応も薬剤アレルギーに含めることも多く,検査についても万能なものがない.さらには,医師により薬剤アレルギーの解釈が異なっており,IgE依存性のI型反応だけを薬剤アレルギーと称する医師・研究者も少なくない. 2015年にJ Allergy Clin Immunol誌に掲載された米国の報告(平成25年3月19日に開催された,薬剤アレルギーに関するワークショップの概要)1)によると,drug allergyという用語自体が検討対象となっており,代案としてdrug hypersensitivity(薬剤過敏症)も検討されたが,後者については機序が免疫機序に限らない(例えば,代謝酵素欠損による副作用も含むことになる)という懸念が示されている.薬剤アレルギーのうちでも,内科医にとって重症度や緊急度の観点から特に注意を要するのは,即時型反応(アナフィラキシーや蕁麻疹)と重症薬疹である.筆者は,薬疹は専門外ではあるが,本稿では,即時型反応の最近の知見に加えて,重症薬疹に関して欧米の記載を読む際に注意しておくべきポイントについて触れておきたい.

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© 2016 一般社団法人 日本内科学会
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