日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
膵神経内分泌腫瘍の診断と治療の最前線
伊藤 鉄英李 倫學三木 正美高岡 雄大立花 雄一植田 圭二郎藤山 隆河邊 顕五十嵐 久人小川 佳宏
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2017 年 106 巻 3 号 p. 611-618

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抄録

日本ではここ数年で膵神経内分泌腫瘍の診断治療に関して多くの新たな展開があった.まず,診断および治療効果判定のバイオマーカーとして,クロモグラニンAの有用性が日本でも示された.一方,膵神経内分泌腫瘍に対する診断および治療においては,WHO(World Health Organization)分類2010によるgradingおよび正確な組織診断が重要であり,腫瘍の機能性の有無,進達度,転移の有無を正確に評価して治療戦略を立てることが重要である.組織診断において超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)が普及し,正確な病理診断および組織に見合った治療が可能となった.さらには,遺伝子変異の有無の評価もできるようになった.一方,Ki-67指数が20%を超える高分化型NET(neuroendocrine tumor)症例も確認され,治療反応性も低分化型NEC(neuroendocrine carcinoma)と異なるため,新たにNET G3という概念が提唱された.多くの神経内分泌腫瘍にはソマトスタチン受容体2が発現しているが,それを利用したソマトスタチン受容体シンチグラフィが承認され,局在診断,遠隔転移の検索,治療効果判定などに貢献し始めた.最後に,治療戦略においては肝転移をいかに制御できるかである.新規分子標的薬の登場により,進行性膵神経内分泌腫瘍の予後が飛躍的に向上している.

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© 2017 一般社団法人 日本内科学会
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