2018 年 107 巻 7 号 p. 1272-1278
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は,代表的な高悪性度造血器腫瘍であり,超高齢社会を迎えた現在の日本において症例数の増加を認め,治療法を含めた疾患理解の重要性が増してきている.AMLの病態形成の中心とされる白血病幹細胞の純化・同定から20年以上が経過し,AMLの病態理解は飛躍的に高まったといえる.この間,種々の新規解析技術の進展にあわせて,白血病幹細胞研究は白血病発症機構の解明のみならず,臨床的予後との関連性,特異的治療標的分子の同定等,非常に幅広い展開をみせている.これは,白血病幹細胞モデルを用いた病態理解が,基礎的白血病モデルのみならず,実際のヒトAMLの理解においても有用であることを示している.さらに,現在では,次世代シークエンサーを用いた遺伝子変異解析からも,AML発症に必要な遺伝子変異群に関する解明が進み,同時に,どのようにして白血病幹細胞が出現してくるのかというAMLの病態形成の根本に関わる部分に関する理解も大きく深まった.本稿では,AMLの病態について,幹細胞研究から見えてきた近年の研究成果を中心に述べたい.