喘息の標準治療は進歩したが,日常生活に支障を来たしている重症患者は未だに喘息全体の5%程度存在し,分子標的薬はその新たな治療選択肢である.IL(interleukin)-5は,炎症形成に重要な役割を担っている好酸球の強力な活性化因子である.現在,抗IgE抗体と抗IL-5抗体に加え,抗IL-5受容体α(IL-5Rα)抗体の臨床使用が可能になっている.抗IL-5抗体の開発過程では,対象患者を好酸球性喘息に限定しなかったため,当初,その有効性が示されず,好酸球の重要性が揺らいだ時期もあったが,好酸球性喘息に限定した試験では有効性が示され,2016年に臨床適用に至った.この過程で喘息病態の多様性が再認識され,分子標的治療においては,分子病態で患者を選択する重要性が示唆された.分子標的薬選択のバイオマーカーが十分確立していない点が課題として残っているが,抗IL-5療法の登場で重症喘息治療の選択肢は増え,また一歩,治療体系は進歩した.