2006 年 95 巻 4 号 p. 756-762
自己免疫性肝疾患には肝細胞が標的になる自己免疫性肝炎と胆管が標的となる原発性胆汁性肝硬変, 原発性硬化性胆管炎, および原発性胆汁性肝硬変の亜型とされる自己免疫性胆管炎が含まれる. これらの疾患の発症には遺伝因子とともに, 微生物感染や環境汚染物質, 化学物質などの環境因子が関与していると思われる. 最初のトリガーとしては細菌などの微生物の感染であることが想定されるが, その後の特異的な免疫反応に連携するものとして自然免疫系の関与が考えられる. 環境汚染物質や化学物質による生体分子あるいは感染微生物由来の分子の修飾により免疫反応が増強され, それに加えて, 遺伝因子で規定される化学物質の代謝様式や免疫応答能や様式の個体差が関与していると思われる. 分子相同性の機序によって自己反応性T細胞が活性化することで自己抗原に対するトレランスが破綻し, 自己免疫反応が進展することが想定される.