日本内科学会雑誌
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I. 診断と治療
3. 真菌・寄生虫
1) 寄生虫性脊髄炎
吉良 潤一
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2006 年 95 巻 7 号 p. 1255-1259

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抄録

寄生虫感染症はわが国では著明に減少したため, 過去のものとみられがちである. しかし, 現在でも寄生虫感染症は散発しており, 近年では一部の食品媒介性寄生虫感染症はむしろ増加傾向を示している. 中枢神経系を侵す寄生虫性疾患のうち, 本稿では, そのトピックスとして, ブタ回虫性脊髄炎, イヌ回虫性脊髄炎について自験例を中心に紹介した. これらは, ブタ回虫, イヌ回虫の幼虫が諸臓器に迷入して障害を起こす (visceral larva migrans). 寄生虫性脊髄炎では, 全身症状を欠く場合や末梢血で好酸球増多を欠く場合があり, 非圧迫性ミエロパチーの鑑別診断上重要である. 血清, 髄液の抗寄生虫抗体の測定により容易に診断でき, Albendazoleなどの抗寄生虫薬投与により治癒することから, 現代日本でも忘れてはならない寄生虫性神経感染症といえる.

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© 2006 一般社団法人 日本内科学会
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