2007 年 96 巻 11 号 p. 2413-2417
クリプトスポリジウムは,マラリア原虫やトキソプラズマと同様に,胞子虫網コクシジウムに属する原虫である.クリプトスポリジウムはヒト及び動物の腸管に寄生し,小腸上皮細胞に侵入し増殖する.これらの原虫は健常人には通常大きな病害性を示さないが,時に旅行者下痢症の原因となったり,水道水等の汚染により集団感染を起こす.また,HIV/AIDSなどの免疫不全患者の感染では劇症の下痢症・多臓器への感染により時に致死的な経過をたどることがある.本稿では日和見腸管感染症として重要なクリプトスポリジウム症の生物学・疫学・臨床,更に最新の診断,将来の新規治療標的などを含め概説する.