日本内科学会雑誌
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IV.最近のトピックス
2.チロシンキナーゼ阻害薬
矢ケ崎 史治
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2007 年 96 巻 7 号 p. 1411-1419

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抄録

1970∼80年代にかけて,v-Srcの発見を発端に次々とレトロウイルス癌遺伝子(v-Onc)が発見され,v-Oncの多くが基質タンパクのチロシン残基をリン酸化するチロシンキナーゼ活性(TK活性)を有することが明らかにされた.これまでのヒトゲノム解析により,TK活性を有すると考えられる遺伝子は90種存在し,細胞の増殖,分化,生存,運動,形態形成に関わることが知られている.これらのTK遺伝子群は,がん細胞において変異,増幅,染色体転座によるキメラ遺伝子形成などの体細胞変異により恒常的に活性化し,発がんに重要な役割を果たすことが明らかにされてきた.慢性骨髄性白血病(CML)に対し,責任遺伝子であるBCR-ABLの恒常的チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するTK阻害薬,イマチニブ(imatinib mesylate)が臨床応用され,その予後を大幅に改善しつつある.またTK遺伝子の変異や過剰発現を認める固形がんにおいてもTK阻害薬が有用であることが報告されている.今後はTK遺伝子を分子標的とした癌治療が増えていくと思われる.一方で,CMLではイマチニブ耐性化やCML幹細胞のイマチニブに対する低感受性が新たな問題点となってきている.本稿では造血器腫瘍を中心にTK阻害薬の開発の現況と問題点を概説する.

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© 2007 一般社団法人 日本内科学会
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