日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
介護予防のエビデンス
鳥羽 研二
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2008 年 97 巻 10 号 p. 2566-2574

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抄録

介護予防は,日常生活自立機能,基本的日常生活動作,認知機能など多くの要素別の機能低下の多段階を理解し,何を予防するかを知ることがスタートである.介護予防は,慢性疾患ケアから,障害には段階的構造があることの理解を経て,社会サービス受給への概念に変化した.虚弱(Frailty)の進展因子として,疾患,液性因子(ホルモンや生化学物質),生活習慣と,統一した概念としてホメオスタシス破綻などの考え方がある.簡便な虚弱者のスクリーニング方法が開発されている.我が国の介護保険は概ね順調に推移したが,介護予防が失敗したのは,地域の高齢者の自主的な参加要件である,高齢者自身の役割付与,予防の意義の説明,「選択と楽しみ」のいずれにも配慮がなかったことによる.介護予防事業を根本的に改善するためには,内外のエビデンスに基づき,科学的アプローチを行うことが必要である.

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© 2008 一般社団法人 日本内科学会
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