2010 年 99 巻 5 号 p. 964-969
腎障害と肝障害は密接に関連する.臨床的には,進行した肝障害に腎障害が併存する場合は,予後不良である.その中でも,急性腎不全を呈する場合は,腎前性および腎性の腎障害が主体となる.しかし,まれに腎後性の障害がみられることもある.このうち,肝腎症候群は進行した肝障害,特に腹水を伴った肝硬変とともにみられ,腎には特別な病理学的変化を伴わずに,機能的障害が主体の病態である.肝障害を伴う急性腎不全に対する治療としては,確立された,特異的な治療は無く,複合的な病態を理解し,増悪因子の着実な改善が必要である.