日本内科学会雑誌
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橢円赤血球増多症を有する一家系に就て
馬場 秀男
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1943 年 31 巻 9 号 p. 475-479

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抄録

余は腎盂炎にて當陸軍軍醫學校内科に入院せる患者に偶々橢円赤血球増多症を發見し、更にその家系調査を行ひ得たる四例の全例に本症を發見せり。入院例以外の四例は何れも健康者にして、身体的に病變を全く認めず、全例に於て血液檢査を行ひしも、著明なる貧血を呈せし例なく (但、第三、五例に於ては、輕度なる血色素値の低下を示せるも、同時にエオジン好性細胞増多を伴ひ、寄生虫感染の有無を檢索し得ざりしを遺憾とす)、黄疸も亦之を見ざりき。白血球數、血小板數、網状赤血球數にも著しき變化を認め得ざりき。全例に於て網状赤血球を檢したるに、是等も亦正常と異らず円形を呈したり。又、骨髓穿刺を行ひし一例に於ては、流血中と同様、穿刺液中に橢円赤血球を證し、輕度なる赤血球系統増生の傾向を見たる他著變なく、有核赤血球は盡く円形に近きを見たり。低調食塩水に對する赤血球の抵抗は全例に於て最高抵抗力稍々減弱せるを見たり。
而してこの程度の、認むべき増加ありとも云ひ難き網状赤血球數・輕度なる骨髓赤血球系統の増生・赤血球抵抗力の低下を以て、直ちに本症に於ける血球破壞増加の有無を斷ずるは難かるべく、この點に關しては猶今後の研究に俟つべきものと思惟す。

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