日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
筋注鉄剤の鉄代謝に関する研究
第3編 網内系填塞が筋注鉄剤代謝に及ぼす影響並びに鉄剤によるSiderosisに関する実験的研究
服部 理男
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 48 巻 4 号 p. 622-631

詳細
抄録

犬実驗で筋注鉄剤の鉄利用に網内系の果す役割, 及び過剰量投與された鉄剤が個体の鉄代謝に及ぼす影響等を檢討した. 犬に鉄剤100mgを靜注すると血清鉄結合能は忽ち飽和されるが, 筋注時は血清鉄結合能は飽和される傾向に乏しく, 完全飽和は大量長期投與後に漸く見られた. 網内系を墨汁により填塞すると, 鉄剤を靜注後においても, 鉄結合能の一部は飽和されずに残る様になる一方血清鉄の消失態度は填塞前後で大差がなく, 鉄剤から鉄を遊出する機構に網内系が重要な役割を果すと思われ, 鉄剤を過剰に投與した犬にHuffの法により, Fe59の靜脈内投與試驗を行なうと, Plasma Fe59 Disappearanceは鉄過剰投與犬で遲延するが, Fe59の赤血球への利用は鉄過剰投與犬においても良好である. 即ち鉄剤過剰投與状態でも鉄の赤血球への利用は良好である. 鉄剤過剰投與犬の各臓器につき鉄量測定及び組織学的檢査を行なうと, リンパ節系, 肝, 骨髓に鉄量が高く, 腎, 脾, 肺, 膵筋肉等は対照とほゞ同程度の鉄を証明したに止まつたが, リンパ節系は殊に鉄濃度が高く, 同系が鉄剤の運搬に関與している可能性が考えられた.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top