1959 年 48 巻 9 号 p. 1474-1479
迷走神経のInsulin分泌調節機構を検索するにあたり,諸神経電気刺激のInsulin分泌に及ぼす影響を検討した.即ち,下垂体副腎髄質剔出ラット法により,イヌの膵静脈血漿Insulin濃度の変動を観察し,次の成績を得た. 1)横隔膜直上で切断した右側迷走神経末梢端の電気刺激は,上膵十二指腸静脈及び脾静脈膵枝の血漿Insulin濃度の著明な一過性の増加を惹起した. 2)左側迷走神経の電気刺激は,上膵十二指腸静脈血漿Insulin濃度に特異な影響を与えなかった. 3)両群の末梢血糖値は,共に一定の変動傾向を示さなかつた.以上の成績より,右側迷走神経はInsulin分泌に対し,直接的な促進作用を有するものである事を結論した.