日本内科学会雑誌
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放射性鉄を用いた鉄代謝の研究
第3編正常ならびに四塩化炭素障害家兎の鉄代謝に及ぼす瀉血の影響
大川原 康夫
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1961 年 49 巻 12 号 p. 1507-1521

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抄録

本編では正常ならびに四塩化簾素障害家兎の鉄代謝に及ぼす瀉血の影響追究し,瀉血時の貯蔵鉄動員について檢討した.瀉血後12時間にすでに造血機能の促進を認め,瀉血後の血清鉄比放射能の低下はそれぞれの非瀉血家兎より著しく,血清鉄が造血に利用されると推定した.瀉血による貯蔵鉄の動員は正常家兎では肝のフェリチン,小腸の各分画非ヘミン鉄に認められ,障害家兎では小腸をはじめとして,四塩化炭素障害時に鉄の導入が活発であつた肝のヘモジデリン分画,胃粘膜・大腸・腎皮質の各分画非ヘミン鉄に認められた.生体の主な鉄吸収部位である小腸の非ヘミン鉄は瀉血による血清鉄量の低下に反応してすみやかに血中に放出され,粘膜細胞の鉄濃度の低下をはかり,新たな鉄の吸収に備えると推論した.また臓器全量に保有される鉄量において肝に次ぐ小腸に速かな動員利用の傾向が認められることは,小腸が鉄の吸収のみでなく造血にも関與して大きな役割を演ずることを示唆するものである.

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