日本内科学会雑誌
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老人性肺気腫の心肺動態
坂口 大吾
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1960 年 49 巻 3 号 p. 216-226

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抄録

高年者の肺気腫には閉塞性気道障害を中心に進展したと考えられる慢性肺気腫と,気道障害の著明でない,いわゆる老人性肺気腫とがある.気管支喘息の既往がなく, Air trappingの見られぬものを老人性肺気腫と定義して,慢性肺気腫と比較しながら心肺動態を観察した.老人性肺気腫では,換気機能障害, Anoxia, Hypercapniaの存在,ガス血液分布関係の失調および軽度の肺動脈高血圧症など心肺動態の全般にわたって障害が見られるが,慢性肺気腫では以上の諸値がすべて一般にさらに高度に障害されていることがわかつた.肺生理学的には兩者の本質的な差は器械的な気道障害のみであつて, Air trappingの有無とともに肺胞内圧変動の差や肺動脈圧の呼吸性動揺の差としてあらわれ,慢性肺気腫においてこれらは一そう著明である.加療により慢性肺気腫の気道障害が減少すると肺機能障害の程度も全般に軽度となり,老人性肺気腫のレベルに近づく傾向が見られた.このことは兩群を通じて共通な心肺機能障害があり,これはある程度非可逆的な変化化が大きい部分をしめているが,この上にさらに気道の障害が加わると,換気能率の低下とあいまつて,さらに機能障害が高度になつて肺性心へ移行する危險が増すと考えられる.

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