日本内科学会雑誌
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内分泌と血液像に関する研究
第2報睾丸摘出ラットについて
大久保 滉完岡 市光氷室 一郎楠野 弥与子
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1962 年 50 巻 11 号 p. 1163-1173

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抄録

睾丸摘出(睾摘)ラットをA群(生後50日),B群(90~110日),C群(160~200日),D群(500~700日)の4群に分け,各群にtestosterone (T) 500γの毎日投与,一方A群では鉄,コバルト(Co)のそれぞれ単独投与,又はTとの併用投与, C, D群にはmethylandrostendiol (M)の投与を行なつた.成績:赤血球系;睾摘により生ずる低色素性小赤血球性貧血は,T投与で貧血は防止出来たが,赤血球直経の左方移動は軽度ながら残存した.鉄,Coおのおの単独投与では貧血は防止出来ず,Tとの併用投与では完全に防止されて,M投与では防止出来なかつた.白血球系;睾摘によりC群では好中球の持続的な減少がみられ,これはT投与で完全に防止された.鉄,Coのそれぞれ単独投与では好中球はほとんど著変なく,Tとの併用投与で著明な増多を示した.骨髄像;睾摘によりやゝ低形成の像を示し,T投与でほゞ正常像,鉄, CoのそれぞれとTとの併用投与では過形成の像を示した.以上の成績より,(1)睾摘の血液像への影響は動物の成熟度により左右される.(2)睾摘により生ずる貧血の一端はTの蛋白同化作用によるものではなくて,鉄或いは,Co代謝を介して二次的に惹起される.(3)Tは赤血球系のみならず,白血球系に対しても影響を与えるものと考えられる。

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