日本内科学会雑誌
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腸チフス患者赤血球の一凝集反応
中村 舜吾
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1961 年 50 巻 5 号 p. 390-396

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抄録

腸チフス患者赤血球が,腸チフス死菌で免疫した家兎血清と凝集を起こすことがわかつた.異種凝集素を吸着除去した家兎免疫血清の稀釈液と腸チフス患者赤血球浮遊液と混和し, 5時間37°Cに放置した後,その凝集を検した.この反応は腸チフス患者22名のうち11名(50%)に陽性であつた.健康者,腸チフス混合ワクチン接種者,腸チフス以外の疾患,腸チフスの既往歴あるものでは全例に陰性であつた.腸チフス死菌で免疫した4匹の家兎では全例陽性であつた.この凝集反応の陰陽はChloramphenicol投与によつて影響はうけなかつた.この凝集反応は, Typhus Abdominalis-Middlebrook-Dubos反応と同様に腸チフス発病早期に既に陽性になり,そして発病後3週では陰性になつた.この反応は腸チフスの早期診断に役立つ.この反応が抗原・抗体反応であるにしても,その機構においてWidal反応と異なるものがあるであろう.

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