日本内科学会雑誌
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長期保存赤血球の輸血後寿命に関する研究
中尾 善久和田 武久神山 照秋中尾 真
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1962 年 51 巻 3 号 p. 211-219

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抄録

現在血液の保存には, acid citrate-dextrose液(ACD液)が一般に用いられているが,この有効期間は3週間とされ,この期間を過ぎると輸血後の赤血球のviabilityは70%に低下する.著者らの一人,中尾(真)は,この保存期間を延長することについて, ACD液にinosine, adenineを同時に添加する方法を考案した.本文ではこの新しい保存液(ACDIA液)で血液を長期保存し,その輸血後の赤血球のviabilityを検討すると共に,健康成人,職業的供血者の長期保存血についても比較検討した.測定にはCr51法を用いた. 8週間保存血の自己溶血量は全例共少量であつたが,特に健康成人のACDIA液保存血に少なく, 0.75%に過ぎなかつた. 8適間保存血の輸血後のviabilityは,健康成人のACDIA液で80%を示し,これはACD液のみで3週間保存した時のviabilityよりすぐれていた. ACD液のみの健康成人8週間保存血では20.4%に過ぎなかつた.一方職業的供血者血では, ACDIA液で同様保存しても,その輸血後のviabilityは16.4%に過ぎず, ACD液のみではこれ以上に少なかつた.又ACDIA液にて8週間保存した健康成人赤血球の経時的な流血中の減少率は,正常新鮮血と同様な減衰を示すが,職業的供血者保存赤血球では,その減少はより急激であつた.健康成人と職業全供血者の保存赤血球のこの様な輸血後viabilityの差は,後者においてたとえ貧血はなくとも,幼若な赤血球が多く保存されるためであろうと考えられるが,この想定を本文では,家兎網赤血球を用いて解明した.

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