1962 年 51 巻 5 号 p. 579-584
1946年松原反応が提唱されて以来,有効因子の追求および反応液(抗原)の改善が研究され.特異性の向上に努めて来た.しかるに予期に反し, 6~10%の不合理陽性を除くことはできなかつた.これは反応液の包含する非特異性状によつて惹起されるものではなく,生体皮膚の非特異反応性が関与するものであろうとの観点から実験を行ない,副腎皮質ホルモンの内服により生体皮膚の非特異反応を減弱せしめて,少なくとも不合理陽性反応の81.8%を訂正することに成功した.副腎皮質ホルモンが癌患者の陽性反応,非癌者の陰性反応には何等の影響も及ぼさなかつた事から考えて,この実験成績は松原反応が抗原抗体反応であることの一論拠となり得ると同時に,松原反応の癌診断におけろ価値を更に向上せしめるものということができる.