51 巻 (1962-1963) 7 号 p. 900-909
種々の病態で著明な変動を示すことの知られている好中球アルカリ性フォスファターゼについて,その由来や変動の機構に関して, azo色素法を用い検索しつぎのような知見を得た.好中球の生活史との関連について,個々の好中球はそれぞれ種々の活性値を示し得るが,平均の活性値は核数の増加と共に上昇し,また同じ核数の細胞でも骨髄中の好中球は末梢血中のそれより低値を示す.すなわち,いわば好中球の成熟と平行して本酵素活性が上昇するかの如くである.この関係は著明に活性の上昇をみる急性感染症の場合にも認められる,この場合,正常時は最も低値を示す骨髄中の杆核球も正常の血中3~4核のそれをしのぐ程に,全体に活性の上昇を見,成熟と関係のある活性値の上昇以外の要因の存在を考えさせる.各種の実験的条件での活性を検索すると, adrenalin及びcobalt chlorophyllinによる姓中球増多時やcortisol及びACTHの比較的少量1回投与では活性に著変をみない.これらに反し,気脳術にて中枢を刺激して起こる著明な好中球増多時には本酵素活性値はむしろ低下し, ACTH40単位3日連続投与では好中球増多より1~2日遅れて著明な本酵素活性の上昇を認める.これらの酵素活性に著変をみた気脳術時及び大量ACTH投与時の個々の好中球の活性値は,前者では全好中球のそれが低下し,骨髄内好中球の型をとり,骨髄中の好中球が急速に遊出せることを示すが,後者では全好中球の活性が上昇し,感染症にみられると同様の型を示した.以上より,好中球アルカリ性フォスファターゼ活性は,細胞の成熟と関連した変化一核数による変化一,骨髄と末梢血での差と共に,好中球の急速遊出による増多を起こす機構とは別個の,下垂体副腎皮質系と関連を有すると考えられる機構による変化を受けるものと考えられる.