日本内科学会雑誌
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副腎皮質ステロイドによる完全房室ブロックの治療
坂口 大吾
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1963 年 52 巻 1 号 p. 36-43

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抄録

Prinzmetalら(1954)が心筋硬塞後に起こつた完全房室ブロックにACTHを注射して洞調律に戻つた症例を報告して以来, ACTHや副腎皮質steroidを,種々な原因の心臓ブロックに使用した経験はこれまでに54例に達する.このうち,わが国での報告は2例で,いずれも不完全ブロックである。著者の経験した症例は60才の女で,高血圧性心疾患に起因すると思われる完全ブロックである.心房拍動数は53~70整,心室拍動数は31~33整であつた.paramethasone 1日量3mgを投与し, 12日目に至つて,突然,洞性全調律に復した.この時のPQ時間は正常で心室拍動数は平均50であつた. paramethasoneはこの後漸減して中止した(総量47.5mg)が,洞調律は36日間保たれた. 37日目に不完全房室ブロックが出現したが, paramethasone 2mg 1回の投与で,洞調律がえられた.この後不完全ブロックがときどき出現するので, paramethasoneの投与を続けたが20日目ごろからは安定した洞調律となり投薬を中止した(総量49mg).投与終了後の副腎皮質機能検査で,軽度の機能低下を見たほかは,順調な経過をとつている.本治療法は,これまでの報告では54例中37例(69%)に有効で,なお,投薬後早いものでは1時間後,遅いものでも8日目までに洞調律がえられている.その点, 12日目に至つて洞調律に復した本例は特記すべきことと思われ,さらに,その後に起こつた不完全ブロックは,投与後1時間で解消した点も興味がある.

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