日本内科学会雑誌
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老年にみられた広範な非特異性大動脈炎の1例
沢山 俊民宮尾 憲爾平林 正巳
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1964 年 52 巻 12 号 p. 1514-1520

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抄録

65才の女で,頭痛と左半身の異常感を訴えて入院,右上肢および両下肢におけろ脈拍の減弱ないし消失があり,左上肢は高血圧,右上肢および両下肢は低血圧を示した.聽診上,左右の頚動脈領域をはじめ大動脈に沿つて殿部まで広範囲に血管狭窄雜音を聽取した.胸部X線写真では,大動脈弓および下行大動脈起始部に著明な拡張像を,下行大動脈には広範囲な石灰化と狭窄像がうかゞわれ,さらに大動脈造影によりこれが確認された.臨床検査上,血清コレステロールは軽度高値を示したが,他に動脈硬化を思わせる病変なく,一方,赤沈の軽度促進,および血清膠質反応の上昇をみたので,病因としては,非特異姓の炎症を考え, prednisoloneを投与した.その結果,有意に異常所見の改善をみたが,同薬を中止すると旧値に復する傾向がみられた.従来の報告では,本疾患は若年者ないし中年者に限られていたが,本症例は65才という老年者にみられた1例である.

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