1963 年 52 巻 8 号 p. 954-960
周期性四肢麻痺は欧米では家族性に発生するものが多く,甲状腺機能亢進症を合併するものは極めて稀であるのに反し,本邦では半数以上が甲状腺機能亢進症を合併しており,この点著しい対照をなしている。四肢麻痺の発作時に一過性の血清K濃度低下を伴うのが通例であるが, Gamstorp (1956)の最初の報告以來,発作時血清K上昇を示す例のあることが報じられている.これらは家族性の例であってthyrotoxic typeのものでは未だ文献上報告がみられない.しかるに今回われわれの經験した37才,韓国人男子例は,甲状腺機能亢進症を合併し,四肢麻痺発作時血清Kの上昇を認め, KCl経口投与により増悪し,發作を誘発した.またprednisoloneは極めて有効であり,抗aldosterone薬(spironolactone及びtriamterene)で増悪する等通常の例と逆の態度を示し,甲状腺機能亢進症の治療により発作も終息した.