日本内科学会雑誌
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実験的有機水銀中毒時の水銀臓器内分布および排泄
山下 昌洋
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1964 年 53 巻 5 号 p. 529-538

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抄録

水俣病の原因は,水俣病研究班の多くの研究の結果,メチル水銀化合物による中毒であることが確認された.著者はCH3HgSCH3, (CH3Hg)2S, CH3HgCl, CH3HgIおよびC2H5HgI, (C2H5Hg)2HPO4をネコに経口投与し,臓器内水銀量および尿,便中水銀量をdithizoneを用いる比色定量法により測定し,動物水俣病のぞれと比較検討した.さらに, (C2H5Hg)2HPO4にV.B1, BAL, peaicillamineをそれぞれ併用してネコに投与し,その治療効果を検討した.これら水銀投与ネコの肝、腎、脳、毛には水銀量が多く,これらの中でCH3HgSCH3投与ネコと動物水俣病の臓器内水銀分布が最もよく一致していた.また,尿中水銀排泄量は便のそれに比し少量であり,総水銀投与量に対する尿,便中水銀排泄量は比較的少量であつた. (C2H5Hg)2HPO4にV. B1, BAL, penicillamineをそれぞれ同時投与したネコでは, (C2H5Hg)2HPO4単独投与ネコに比較して,腎内水銀量が少量であつた. (C2H5Hg)2HPO4にBALまたはpenicillamineを同時投与したネコの尿中に,著しい水銀量の増加を認めた.

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