1964 年 53 巻 5 号 p. 539-548
造血臓器の体外組織培養を蛍光色素acridine orangeで染色し,蛍光顕微鏡で観察する方法(蛍光培養法)を案出し,広く臨床に応用して,主として白血病の診断に役立たせようとした.骨髄,リンパ節,さらに腹腔鏡直視下に生検して得た脾組織片を平木式培養盤で培養し, acridine orangeを培地濃度1万倍となるよう加えた.正常人骨髄,脾およびリンパ節の培養増生帯は中心部が密で,周辺に向つて漸次疎となり,骨髄では顆粒球の蛍光により赤橙色を,脾,リンパ節ではリンパ球により黄緑色を呈した.白血病の各臓器の増生帯は非常に稠密で,辺縁が鋭利に区画され,幼若細胞の蛍光によりびまん性緑色を呈し,成熟細胞が混在するにつれて骨髄性では赤橙色を,リンパ性では黄緑色をおび,単球性では顆粒球,リンパ球も混在したため,緑色,赤橙色,黄色が混じた多彩な蛍光となつた.慢性白血病では成熟細胞の蛍光に支配された二重増生帯を形成した.各白血病およびその他の疾患の増生帯は,増生様式および蛍光に差があり,本法を白血病の診断に利用しうる.