X線造影薬として使用されたトロトラストによる胆管癌の報告は日本では未だ50例にも達せず,皮膚転移を伴なつた報告はない.著者らは,さらにシャンパーグ病とcalcinosis cutisを合併した症例を長期観察した.約40年前にトロトラストにより血管造影が行なわれ,肝硬変とて治療中,皮膚転移巣出現により胆管癌と考え,諸検査と治療を続行したが,死亡した.剖検で胆管癌であることを確認し,さらにトロトラストの沈着も確認した.肝組織1gより2πガスフロ一カウンターにて480cpmの放射能を検出し,ラジオオートグラフィーでα線トラックも検出した.皮膚以外に両肺,右副腎,後腹膜リンパ節にも転移巣を認めた.