日本内科学会雑誌
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内科疾患における酵素学的研究血清LDH isozymeを中心として
村上 春雄
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1966 年 54 巻 10 号 p. 1147-1155

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抄録

新鮮心筋硬塞,急性肝炎ではおのおの特徴的なLDH isozyme (LDHi)のpatternが知られているが,その他の疾患では未知の分野も少なくない.著者はLDHiの診断的意義を解明する目的で諸内科疾患144例について血清LDH, HBD活性, LDHiを観察した.新鮮心筋硬塞6例ではLDH, HBD, LDHiは在来の知見と一致したが, LDHiでI分画がII分画より大きいpatternは,このほか陳旧性心筋硬塞,高血圧動脈硬化症,狭心症,うつ血性心不全,慢性肝疾患,悪性腫瘍などの症例でも証明された.急性肝炎7例ではLDH, HBD, LDHiは在来の知見と一致,類似のpatternは悪性腫瘍など3例にみられたにすぎない. LDHiのIII分画ないしIIIおよびIV分画が正常より高値を示した症例は悪性腫瘍,肺感染症,腎炎,白血病などに証明された.従つて,新鮮心筋硬塞のLDHi patternは急性肝炎に比し特異性に乏しい如く考察される,その他のpatternについては疾病の特異性には乏しく,病態生理学的意義を除くと結論はえられなかつた.

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