1966 年 54 巻 10 号 p. 1188-1193
われわれは, 15才の男で右上肢の末梢に強い筋萎縮,筋力低下および軽度の知覚鈍麻を主徴候とし,成書にみられる運動ノイロン疾患のいずれにも該当しない症例を経験した.病変部位がやゝ広範,かつ強く,知覚障害が存在するという点を除けば,東大冲中内科より分離記載された若年性片側上肢筋萎縮症に類似する.しかしながら,健全と思われる他肢の筋電図検査および筋生検により潜在性の筋萎縮が全肢に存在している事を知つた.ひるがえつて,若年性片側上肢筋萎縮症の中にも対側の相当筋で筋電図上異常を認める例も存在すると報告されている.したがつて若年性片側上肢筋萎縮症なるentityに若干の問題があると思われ,著者らの見解を述べた.