日本内科学会雑誌
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血清カルシウムの臨床的研究
金子 重敏
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1965 年 54 巻 8 号 p. 892-902

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抄録

最近,悪性腫瘍患者で骨転移および副甲状腺機能異常がないものに高カルシウム血症のみられる症例が報告されて,従来の血清カルシウム調節機構にかんする考え方は再検討の必要に迫られている.しかも,各種疾患で血清総カルシウムの変動についての臨床的研究はきわめて少なく,さらに,カルシウムを透析性および非透析性に分けて測定した臨床報告は全くみあたらないようである.著者はこの点に注目してカルシウム調節機構を検討する基礎として各種患者504例について血清カルシウムを測定した結果,総カルシウムの増減する疾患について興味ある所見をえた.また総カルシウムが一見変動しないと考えられる疾患でも透析性または非透析性(蛋白結合性)カルシウムが種々の変動を示すことを認めた.例えば,全身の消耗をきたすような急性および慢性肝炎,肝硬変症,癌,肺結核,甲状腺機能亢進症,糖尿病,高血圧症,消化性潰瘍等では血清総カルシウムに著変がない場合でも,透析性カルシウムが増加し,非透析性カルシウムが減少しているが, Conn症候群では透析性が低下し非透析性には変動がなかつた.また,血清総カルシウムと非透析性カルシウムの変動は,血清蛋白,とくに血清アルブミンと正の相関を示したが,血清無機燐との間には相関を認めえなかつた.このようなカルシウム変動の作用機転についても文献的考察を行なつた.

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