54 巻 (1965-1966) 8 号 p. 940-945
けいれん発作および精神症状を呈した特発性血小板減少性紫斑病の1例を経験した.症例は29才の女.主訴は皮下出血斑と倦怠感.入院時,全身に点状,および直径1~2cmの出血斑を認め,とくに下腹部に著明であつた.著しい貧血と血小板の減少を認めた. ITPの診断のもとに治療を行なつていたが10日目に突然全身の間代性けいれんを起こし,発作は日に2~3回で,発作時以外には意識障害はなかつた.しかし,発作がつゞいて起こつたあとから,いつもにこにこしてよく笑つていて,著明な記銘力の低下,自発書字の困難,見当識障害を示した.脳波は両側の前頭部とくに前頭極より1.5~2.0c/s, 100~300μVの高電圧の徐波を認めた.精神症状が軽快した後は脳波もほゞ正常に復した.初期のけいれん発作後4カ月目左口角部より起こり全身に及ぶジャクソン型のけいれん発作を起こしたが,発作間歇時の脳波では全く異常を認めなかつた.その後経過は良好である.けいれん発作は出血性素因による脳内出血のためで,その吸収過程において一部瘢痕化したため,後のジャクソン型けいれん発作を惹起したものと考える.けいれん発作が3日間つゞいた後にみられた精神症状は,けいれん発作のために二次的に起こつて来たもので,単一律動性デルタ波もおそらくけいれん発作の重積のためにひきおこされたものであろう.なお本例はthrombotic thrombocytopenic purpuraと鑑別せられる.