日本内科学会雑誌
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血中corticosteroneにかんする臨床的研究第3編
本態性高血圧症における血中corticosteroneの動態
近藤 隆
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1966 年 55 巻 7 号 p. 753-759

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抄録

本態性高血圧症における血中corticosterone(=compound B以下Bと略す)は正常の約2倍に増加しており,一方cortisol(=compound F以下Fと略す)の増加は著明でなくF/B比の著しい低下が認められ,本症ではBがFに対し相対的な過分泌状態にあると考えられた.この傾向は30~50才の比較的若年高血圧者に著明であつた. ACTH投与に対する反応はB, Fともに本症と正常血圧者の間には差は認められなかつたが,本症ではACTH投与前後を通じてF/B比の低値が注目された.また本症ではカリウム投与によるBの増加は正常血圧者よりも著しい傾向があり, dexamethasone投与下でもカリウム投与によるBの増加を阻止しえなかつた.降圧薬による治療によりB, F/B比は3, 4, 5-trimethoxybenzol methylreserpate(レセルピン),グァネシジンのいずれでも降圧とともに正常化した.一方本症では尿中カリウムの過剰排泄傾向が著明であり,これとB増加, F/B比の低下の間に有意の相関が認められた.以上より本症の副腎においては, ACTH以外の因子たとえばカリウムのような刺激因子によつて強い分泌増加を来たすようなB分泌の励起状態が存在するものと考えられ,これは昇圧に密接に関連した可逆性め変化と推定された。またBの高値がカリウム過剰排泄と密接な関連を有しているものと考えられた.

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