日本内科学会雑誌
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蛋白喪失性胃腸症をきたした胸管,後腹膜,腸間膜リンパ管腫症の1剖検例
萩原 忠文田辺 潤一勝呂 長有山 雄基広原 公昭松崎 正一桜井 勇
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1966 年 55 巻 7 号 p. 797-803

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抄録

腸管からの吸収,代謝面にたいする検査法の進歩は,吸収不全症候群(malabsorption syndrome)の病態生理をより明白にしつつある.ことに蛋白の代謝面からよく究明されているが,蛋白喪失性胃腸症(protein-losing gastroenteropathies)なる1群の疾患群は,腸管の吸収障害によるものである.この蛋白喪失性胃腸症の原因となる基礎疾患として, celiac disease, sprue,限局性大腸炎, Whipple's disease, Menetrier's disease,小腸リンパ管拡張症(心不全によるものも含む)などが報告されている.本症候群は臨床上,著明な低蛋白血症,とくに低アルブミン血症のほか,浮腫,脂肪便,貧血などを呈することが特徴である.最近,われわれは26才の男性で,数年にわたる下肢の浮腫,貧血などを示し,さらに低蛋白血症(3.98g/dl)をきたした1例を経験したが,後腹膜リンパ管造影によつて,リンパ管拡大像をみとめ,開腹手術でリンパ管拡張症を確認したが,術後乳糜性腹水貯留と血清肝炎とを併発し,術後75日目に死亡した.本症例は単純なるリンパ管拡張症ではなく,剖検によつて,腸間膜さらには肝,脾にもリンパ管腫(lymphangioma)があり,このためにいわゆる二次的に小腸リンパ管拡張症(intestinal lymphangiectasia)をきたしたことも興味ある点であり,蛋白喪失性胃腸症について二,三の文献的考察を試みて報告する.

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