1968 年 57 巻 6 号 p. 656-664
心臓内に腫瘍が発生または転移することはそれ程まれではないが,一般に無症状に経過する場合が多いため,その臨床症状にかんする検索は未だ充分とはいえない,われわれは転移性細綱肉腫瘤が右心房内腔にぶら下がるように発育して超鶏卵大に達し,これが起立時や右下側臥位などで上下大静脈口を圧迫して上下大静脈から右心房内腔への血流の還流障害をおこす結果生じたものと解せられる一連の臨床症状を呈した1症例を経験した.本腫瘤は三尖弁口にまでは達しえず, ball-valve syndromeとは異なる“右心房充塞症候群”と新しく命名しうる症候群をもつた症例と解せられた.