日本内科学会雑誌
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慢性閉塞性換気障害患者の予後評価に占める肺循環障害の意義について
板垣 省三
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1969 年 58 巻 2 号 p. 127-137

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抄録

山口大学三瀬内科で扱かつた慢性閉塞性換気障害をもち,諸検査成績のえられた65症例について最長10力年におよび臨床経過並びに予後を観察した結果,予後判断に必要な条件としての換気,肺機能異常の程度を評価するために行なつた機能的障害度区分の有用性を把握し,かつ肺動脈圧中間圧(PAm)を主とする肺循環動態を分析し,その障害の程度を前述の機能障害度区分と比較することは疾患の予後を判断する上に一層の信頼性を加うることを知つた.とくに肺高血圧の有無,その程度を肺動脈圧中間圧(PAm)でもつて4段階にわけて観察した結果, 1)慢性肺気腫,肺気腫を主病変とした肺結核,珪肺などの病群と気管支拡張症あるいは気管支喘息を主病変とし,ある程度の肺気腫を合併した症例,さらに肺気腫をともなわない気管支拡張症,気管支喘息,肺結核などの病変とでは病状の進展,重症度,予後にはかなりの相違があり,前者では機能的障害度と肺循環障害度はよく平行し,この両者からきわめて有意な評価が可能であつたが,後者では多彩な経過を示し,これらの推定方法では評価が難かしかつた. 2)前者において正常肺血圧,肺高血圧群とにわかちおのおのの検討を行ない, PAmのもつ意義が大であるとともに,とくにPAmと楔入圧(WP),肺血管抵抗(PVRI),右室拡張期終圧(RVd)との相互関係から,かなり正確に予後評価が可能であつた.

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