日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
治療による慢性肺気腫患者のスパイログラム,血液ガス,心電図所見における可逆性の実態と限界,および,それらの相互関係にかんする研究
飯田 幸雄飯田 威夫龍華 一男佐竹 辰夫青山 進午水谷 明
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 58 巻 6 号 p. 491-498

詳細
抄録

慢性肺気腫患者では,その基礎的病変が肺胞気道系の器質的変化にあるため,心肺機能も不可逆性であり,したがつて予防が唯一の治療とさえ考えられやすい傾向にあつた.しかし,われわれは治療により少なくとも動脈血のガス性状と心電図所見が改善されることを経験してきた.そこで,スパイロ,血液ガス,心電図所見における可逆性の実態と限界を検討し,あわせて,治療の目標を明らかにしようと試みた.その結果,各項目とも長期治療群の方が気管支拡張薬の1回吸入群の治療成績を上回ること,そのうちでも,スパイロの改善は少ないが,血液ガスと心電図所見の改善が著しいことを見出した.さらに,これらの病態生理上の変化について検討したところ,動脈血のガス性状,すなわち肺内ガス交換の改善には換気不良肺胞群(全肺胞の約70%)における換気血流比の上昇効果と,混合静脈血ガス性状の改善効果とが相半ばすること,心電図所見の改善は,主として換気不良肺胞群での低酸素改善に基づく肺性肺高血圧め低下,ついで動脈血ガス分圧の改善よるものと推定できた.わたくしらの成績は,慢性肺気腫患者における治療,とくに合併した気管支の炎症性因子(inflammatory component)と痙攣性因子(spastic component)などを除くことにより心肺機能が改善しうる目標と限界,および,それらの改善過程における相互関係を明らかにしえた点において有意義である.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top