日本内科学会雑誌
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数回にわたり著明な肺病変の消長を示した急性白血病の1剖検例
堀内 篤松崎 正一大島 年照岡安 大仁萩原 忠文
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1970 年 59 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

最近の白血病治療の進歩はめざましいものがある.しかし一方,二次的病変である感染症,とくに肺感染症の合併は増加の傾向にあり,それに対する予防的対策が検討されはじめている.われわれは1年4ヵ月の観察期間中, 5回にわたり胸部X線写真上それぞれ異なつた陰影の消長を示した急性白血病の1例を経験した.初回は両側全肺野におよぶ気管支肺炎像であり,その後再び左下肺野に気管支肺炎および随伴性肋膜炎の像がみられた.さらに出血による左肺門部の腫瘤状陰影,ついで左上,中肺野の気管支肺炎像を認め,死亡前には左上肺野にアスペルギルス症を思わせる陰影が出現し,剖検によつてこれを確認しえた.白血病における感染症は,抗白血病薬の投与による顆粒球減少症が主な誘因とされているが,本症例の骨髄の白血病細胞は常をこ35%前後で,著明な増加を示さなかつたため,抗白血病薬の投与量は少なく,その他の因子の関与も考えられた.

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