日本内科学会雑誌
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クロルピクリン中毒症
岡田 永子高橋 和郎中村 晴臣
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1970 年 59 巻 11 号 p. 1214-1221

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抄録

鳥取県の弓浜半島では,葉煙草畑の防虫害と除草の目的で,数年前よりchloropicrinによる燻蒸消毒が行なわれているが,本薬物使用時期に一致して,付近の住民の間に各種の症状がみられた.その中毒症状を検索するため,直接診察しえた症例の検討,住民へのアンケート実態調査,および吸入動物実験を行ない,次の結果をえた.臨床例の主要症状は,結膜・気道粘膜刺激症状,各種の自律神経症状および著明な起立性低血圧である.アンケート調査では有症率72%であり,結膜・気道粘膜刺激症状が最も多く,次いで各種の自律神経症状がみられた.症状は大部分短期間に消失するが, 1カ月以上持続するものもみられた.燻蒸地より近距離に住む住民ほど有症率が高かつたが, 100m以上にも有症者はかなりみられ,また加令とともに有症率が高くなる傾向にあつた.動物実験では肺に充血・浮腫・出血・肺炎,全身血管系の拡張,実質臓器の細胞壊死を認めた.

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